特開2045-34987 物語5 価値と位置2
声は女性のものだったが、モニターには画像が映されなかった。
(それはそうよね。奥さんも、お手伝いさんもいるわ。お金持ちのお宅だもん。)
「あの~、ユイと申します・・・。」
後の説明は難しいが、すぐに反応があった。
「はい。ユイさん、お待ちしておりました。ロックを外しますので、ドアボタンを押して中へお入り下さい。」
「はい、わかりました。」
ドアをゆっくりと開くと、そこに立っていたのは見たことのある裸の女だった。
(えーと、乳首のピアス、ヴァギナにも。あ、A0001。女優のユリさん。)
「私がわかったようですねぇ。そう、ユリです。」
もう40に手が届きそうな歳だった気がするが、見かけは十分20代後半で通るであろう。
「ど、どうしてこちらに・・・。」
「さぁ、偶然じゃないかしら・・・って、嘘よ。でも、あなたがここにくるのはもちろん偶然。私がここにいるのは偶然ではなかった。これでよいかしら。」
ユリはユイを応接まで通し、お茶の支度を始める。
(あぁ、この家の主婦のよう・・・私たちクローンには求められないものだった。この人はそれを手にしている。)
「ユイさん。ご主人様は地下室でお遊びです。後でご案内しますが、何かご質問、疑問はあるかしら。」
ユリの言葉にユイは幾つも聴きたい、男の素性、ユリの生活、この家の家族構成・・・・・。
「イッパイありそうですね。少しは大丈夫でしょう。ご主人様がお待ちですけど・・・マユミがいるし。」
違う名前が出た。ユイは聴いておく必要を改めて感じる。
「あのー。何故、ユリさんがここにいるか、からお願いします。」
「うふふっ、それは1時間は必要ね。ちょっと、ご主人様のご許可を得てきます。」
ユリは優雅な身体をスクッと直線にし、応接室を出て行った。
(わぁ、やっぱり女優さん。しかもトップ女優。クローンは遅くに自然界の風に触れる場合、老いない、と聞いたけど本当なんだわ・・・・。彼女が特異なのかしら。いずれにしても、もう数ヶ月で40のはず。その後はどうされるつもりかしら。)
ユイはそんな事を考えながら、部屋に飾られた表彰状などを見ている。
職業は法律に関わるものらしいが、詳しくはユリに聞かなければわかりそうにない。
(お名前は・・・様。記憶通りだけど、ずっとご主人様ね。ユリさんもそうなんだし・・・。)
15分ほどでユリが応接に戻り、さっきと同じ、真向かいの席に背筋を伸ばし座る。
(やっぱり綺麗ね。真っ白い肌とピアス。良くマッチしてる。)
「ユイさん、ここには3人の女性と1人の男性がいます。」
いきなりユリは話し始めた。
「男性は当然、ご主人様です。この方については後で少し・・・お話は後にあるでしょうから。そして、奴隷が2人、家畜が1人です。奴隷はユイさんと私。家畜はマユミさん。マユミさんは奥様でもあります。」
ユリはそこまで言うとユイの質問を待つようにお茶を手にした。
(ド・レ・イ・・・なんだ。限られた時間を買われたんだもん。当然か。そして、少し憧れていた。男性の玩具・・・奴隷。家畜って・・・奥様、えーと、つまり・・・人。・・・。)
「ユイさん、混乱なさっているようね。その薄着は脱いでしまいましょう。牝奴隷に服はいらないわ。ピアスと「鑑札」も見えないし。」
「あ、はい。」
急いで、しかし、いつものユイらしく恥ずかししそうに服を脱ぎ、ユリと同じになった。
「若いわねぇ。私の価格を超えた身体。そして、心。・・・ご主人様がね。「ユイさんはマユミ以上のマゾヒストかもしれない。」っておっしゃっていたのよ。家畜以下だって、どうする?でも、あなたならやっぱり、私を抜いて不思議はないか。もう、濡れているのね。」
ここ数日、ユイは自分の体を慰めていないため、服とピアスの摩擦による些細な振動にも、すぐに反応してしまう。
ユイと同じピアスを付けたユリが、裸で座り直したユイにまた話し始める。
「ユイさんは私の「価格」にこだわったそうね。何故?」
本人の前では答えにくいし、明快ではないユイの気持ちが聞かれた。
(負けたくはなかった。2年間の私の価値はきっとどんな人より・・・。死んでも良い、と考えた。もし、ユリさん以上の価格なら。男性の奴隷・・・牝奴隷。ご主人様が私を女として利用する。私は、私は・・・女になる。)
「その~、私は、・・・私は窓越しに見えるご主人様に女として見られている、と感じたのです。・・・抱かれたい、と思いました。でも、確かめたかった。ご主人様も私を欲していることを・・・。そうであれば、全て差し上げられる・・・。」
ユイは少し涙ぐんだ。
「ユイさん。あなたの想いが伝わった訳ね。・・・女である自分の価値を確認したかった。私もそう。もっとも、私はご主人様のために生まれてきたクローンですから、この結果は当然ですけど・・・。」
「ご主人様は法律に関わったお仕事でお歳は私と同じ、今年40になられます。代々、この家は法律のお仕事をする人が生まれていますが、ご主人様は非常に優秀で、法律をコンピューターに最も的確に読み込む方法を作られた方で・・・良くわかないのよ。人に聞いた事を言っているだけね。で、えーと、作られた方で幾つも賞を頂いています。法律に関わる方ですから法律は的確に守られます。が、私はそのご褒美のような者らしいですね。つまり、例外。・・・ユイさん、女である確認、子供が欲しいと思っているでしょう。」
ドキッとした顔をユイはしたのだろう。
「それは当たり前。私には無理だった。あなたはどうでしょうか。」
ユリもそれを求めた事がはっきりした。
「時間が過ぎていくわ。次ね。家畜の件。マユミと言います。」
「ユリさん、先ほど奥様でもあると・・・。」
ユイが聞きたい件である。家畜と呼ばれていても・・・奥様、なんの事かわからない。
「つまり、マユミは人です。最も、私たちより酷い「鑑札」、記号なんかじゃないわよ。なんか、法律のような文章がお腹に刺青で彫られています。つまり、私は家畜ですってね。後で確かめて下さい。」
それでユリはその話を打ち切って、次の話を考えている様である。
「ユリさん、マユミさんの事、もう少し詳しく教えてください。」
「あ、そうですね。ここは興味がありますよね。なんせ・・・。」
(・・・子供が生める人ですものね。)
子供を法の下で産める存在は妻であるアユミ以外、この家にはいない。
「マユミはね。今年25歳。美人よ。そして、とても頭の斬れる方。だって、ご主人様が週に1度、講義をなさる日本で1番の大学で法律を学ぼうとしていた方だから。でも、ご主人様とそんな関係になって、今では私達より下の家畜。その生活は少しビックリするかもね。お腹の件は言いました。ピアスもされています。後、手が肘からありません。ご自分を家畜にした本当のマゾヒスト。ご主人様のご要望は全て受け入れるし、当然、私の要望もね。そして、私達のピアスに入れられたお薬の人間の実験台にもなった人。大体、おわかりですか。」
ユイの下半身はビッショリ濡れていた。そんな女がここにはいる。
男が本当に愛しているのはマユミだけなのではないか・・・ふと、頭をかすめたが、本当の家畜の姿をした女を見た時、その考えはまた変わるかもしれない。
「最後に、私は南の州に2ヵ月後移ります。あなた、ユイさんが今後、私の役目をしますから、一応、私が厳しくこの家の作法を教える事をご主人様より言いつけられておりますので。ふふっ。」
ユリの最後の笑顔は、もう全てをやり遂げ、新しい生活に移る際の期待が感じられた。
(やっぱり、そうなの。お幸せに。・・・でも、私は「間違わない」。)
ユリの未来への期待に違和感が残り、40以後のユリの生活にユイは、やはり失う事の重大さを感じざる得ない。
ユリを労う気持ちと同時に、ただ歳を加えた女の儚さがユイには見えた。
特開2045-34987 物語6 奴隷生活へ
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