特開2045-34987 物語4 市場

翌日午後、ウィリアム・ジャパン病院に向かった。
この病院は唯一つの受診科目しか持たない。「ピアス科」のみである。
5階建ての建物はクローン女性達で溢れ返っていた。既に5万以上のピアス手術をこの病院が行っている。
他の病院ではピアス価格が特許の関係で5割増しとなるため、今は主要都市に出来た市場の周辺にウィリアム・ジャパン病院は3つほど建っていた。
市場は簡単に造ることが可能で、ここ数年の間に既に20都市で出来ていたが、病院は今の施工方法でも1ヶ月を要するため間に合わない。
土地の問題が大体の事だが、ウィリアム・ジャパンは市街地に土地を購入し、各都市に病院を建てる計画である。
手術後、3日は所謂、術後期間で身体を休める。
施設にいても、病院にいても良いが、病院からはバスが市場に運行されているため病院に残るものも多い。
このバスで運ばれる「美女の群れ」にはそれぞれ別称が付いたが、一番好意的なものでも「三十路バス」、悪意に満ちたものでは「女肉運搬車」であった。
ユイは「女肉運搬車」に揺られている。
しかし、気持ちは晴れ晴れとしていた。(どんな方にお仕えするのかしら。・・・その前に3千万。・・・アァ、オッパイが揺れるたびに感じちゃう。)
その顔はいつかのサクラと同様である。
この時点でユイには120万の借金が生まれていた。(AF03585がユイの赤外線で付けられた一生取れない印である。)
つまり、もう30万を超えるクローン女性が市場に立ったことになる。
短期間、・・・特許成立後わずか3年3ヶ月。病院、特にウィリアム・ジャパンの株は市場に立つクローン女性の数に比例し100倍の50万ほどに暴騰していた。
その株で儲けたものが市場でクローン女性を漁っている様な現状である。(自然、その株が上がると考えた人間は
その趣旨を理解したもので、サクラの様に前もって付き合い、市場に立たせ、自分が競り落とすことを周りと打ち合わせた出来レースも少なくない。)
ユイが役所の女性事務官と面と向かっている。
「ユイさん。宣誓をお願い致します。」これは病院で既に教えられたことである。
全ての段取りは病院でケアがあった。
「はい。・・・宣誓、クローン・ユイは日本国法の全般を理解し、この第1市場132Bの4に自らの意思により規定に従い参加することをここに誓います。」
「ありがとうございました。先ほどの宣誓以後は録画・録音されています。これはあなたの意思と命を守るためです。承知頂いておりますね。」
「はい、承知致しております。」
「では、病院の証明書と失礼ですがこれよりは衣服の着用は認められておりません。お願い致します。」
事務官の居る前に手術証明を出し、後ろ向きになり、軽装を脱ぎ捨てた。ブラジャーとパンティーはもう着用できない身体のユイが事務官の前に戻ることに3分は要しない。
「申し訳ありません。ユイさん、一度、立って下さい。」ユイが立ち上がる。
「失礼します。」事務官の指がピアスがしっかり肉に埋め込められたものか、引っ張って確かめる。
「ウゥー。・・・ハァー。」ユイの喘ぎは事務官には珍しいものではない。
最後にクリトリスを貫通するものの両端からクリトリスのみを摘み、その繊細な神経を持った部位に付けられたものかが確認された。
「ア、ア、・・・モットォ。」指はクリトリスを離れ、まったくユイの言ったことは聞こえなかったことにされた。
「はい、完全です。では、市場での取り決めと金額が決定し、負債額との差し引きに・・・・・。」
ユイは市場の控え室に居る。
(何、あの快感。気をやった・・・かしら。意識を少し失ったのは間違いないけど。私の身体は誰に同じことをされても、もうイッテしまう。)
同じ手術が施されたものが5,6人裸でポツリ、ポツリといる。中にはモニターで市場の具合をずっと見ているものもいた。
たぶん、男との示し合わせがあるのだろう。
今日は比較的若いクローンが多いらしい。25を超えたものは居ないに違いない。
そのためか、1千万/年以上が続出し、市場は活気に溢れている。
ずっと、モニターを眺めていた「女」の順番になった。
「エントリー11番 サヤカさんです。お歳は21歳。5年契約をお望みです。サヤカさん、中央にお進み下さい。」
決まった通りの紹介でサヤカと言うらしい「女」が中央に出て、一度礼をした。
腕を横に上げ、少しずつ足を開く。
「買い手」側からは望遠レンズ機能があるため、細かい部分もチェックできる仕掛けである。
「さやかさん。結構です。ソファにお座りになって、足を手で抱え持って下さい。」女の全てがアカラサマになる格好を司会は上品に促した。
「ご苦労様です。では、皆様、金額をお入れ下さい。」
ここにいる全ての「買い手」は買値を入れる義務がある。そして金額と共にそれをまだ上げる意思があるかを赤と緑のボタンで選択する。
緑が3人で3000万円、後は1000万円で赤である。赤は打ち止めであった。
今回の「セリ」の中では異常な低金額と言えた。
「緑が3人、3000万円です。次の金額をお願い致します。」
あっという間に型が付いた。5000万の緑が一人。他が4000万の赤。
「ハイ、決定致しました。K.M様に決定。5000万です。ただし、緑です。サヤカさん、金額は・・・1億ですね。
どういたしましょうか。」
サヤカと言う「女」はずっと鏡越しのK.Mと言う男を睨んでいた。
きっと、1億の約束があったのだろう。
「拒否します。」サヤカは悔しさを滲ませ言った。
「拒否です。緑のお客様、判断をお願い致します。」緑のランプが赤に変わる。
つまり、値上げはなく5000万、1年1000万が確定し、後は拒否か受け入れるかのサヤカの判断しかない。
「サヤカさん。拒否でよろしいでしょうか。」
「・・・・・。」
「はい、拒否ですので、今回は、」
「待ってください。受諾します。」
「サヤカさん、5000万でよろしいのですね。」涙交じりにサヤカが首を肯定させた。
「はい、5000万決定です。サヤカさん、ご苦労様でした。入ってきた逆のドアからご退出下さい。」
明らかに出来レースなのだろう。
ピアスの効果を知っている両者は、金を出す側が勝つ。
きっと愛しい男の裏切りなのだ。
ここで拒絶すれば「女」は行き場がなくなる。
サヤカの非難の声はピアスが止めてしまったに違いない。
いよいよ、ユイの番だった。
「エントリー14番 ユイさんです。お歳は22歳。2年契約をお望みです。ユイさん、中央にお進み下さい。」ユイは少し恥ずかしげに顔を落として、進んで出る。
両手足を広げる。
明らかに愛液で濡れ、それは足を伝わっていた。顔が少し上がり、虚ろな表情に色気が見える。
ソファに進むマイクの案内は3度され、初めて気が付いた様にユイはソファに上がり、手で足を持ち上げる。
ユイは初めて自分が濡れていることに気が付く。
顔が赤く染まり、下を向き目を閉じてしまった。
「ユイさん。ソファにお座りになって、足を手で抱え持って下さい。」
足はゆっくり広げられ、手が添えられる。銀のピアスがAF03585の下、手術のため剃毛された後で濡れそぼって
見える。(買ってぇ。私を買ってぇ。)
下の口が叫んでいるようである。
「ご苦労様です。では、皆様、金額をお入れ下さい。」
本命だったかの様な値段が並んだ。5000万を筆頭に3500万までグリーンのランプが全てで付いている。
「え~、皆様。現在5000万が筆頭で皆様、緑。では、2度目のご記入を。」
打ち合わせな様なものは感じられない。ユイの2年は間違いなく誰かの手に落ちる。
5000万以外は全て金額を上げてきた。
16人中の買い手でギブアップは8名。
6000万で赤4人。緑が1人。最後に金額を入れたものは8000万円の緑。緑はまだ4人いる。
タバコを煙を吐きながら、余裕でユイを見ている男が最初の5000万円。
(あの人に抱かれる・・・。・・・奴隷になる。)ユイの願望は実現しようとしている。
(奴隷。男の方の奴隷・・・素敵じゃない。受け入れることのみ許される。何をお求めですか。)
ユイと男の目が合った。(ふ、ふ、何をお望みだい。)確かの男の声を聞いた気がする。
(す、全て受け入れます。)ユイのヴァギナが白い液体を吐き出した。
「この赤は取り消せるか。」マイクで1人の男が司会に聞く。
今までになかったことだが、司会は厳粛に答えた。
「赤は取り消せません。4人の緑がございます。最高は8000万。では、もう一度お願い致します。」
1億が2人赤、緑1名。
例のたばこの男は1億2千万まで一気に上げ緑である。
「年単価6000万、最高金額。まだお二人の緑がございます。次をどうぞ。」
あっけなく方がついた。タバコの男は1億5千万にし、緑である。もう一人は1億3千万の赤。
「1億5千万となり、緑のS.S様に決定です。ユイさん、ご希望の5千万は大きく上回っております。しかも、年7500万の2番目の金額。そして、相手様は緑です。問題はありませんね。」
「・・・。」
「問題はありませんね。」司会が繰り返した。
「あのぉー、最高はユリさん、女優のユリさんの1億でしょうか。」ユイは自分の価値を確認したい。
それ以上ならこの人のために、今、死んでも良いと考え、男の顔を見つめていた。
男はタバコを咥え、余裕で煙の行方を追っている。
「えー、左様です。今までの金額でそれを上回るものはありません。」
「・・・では、申し訳ありません。2億1千万をお願いします。」
司会が戸戻っている最中、男は苦笑いを浮かべながら、ゆっくり2億1千万を打ち、赤に変えた。
「えー、2億1千万です。歴代最高額。おめでとうございます。ユイさん、では出口よりご退出ください。」
ユイの口のみが動いた。(あなたのためなら死ねます。)
男は理解したのだろう。手元のワイングラスをユイに向けて上げた。
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さあ、九スポの小説締め切りも迫ってきました!この盆で書き上げます!!
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