特開2045-34987 物語3 契約2

集団生活には18歳以下と、39歳以下までの2種類がある。
20歳を超えたものは、自由に住居を選べるが、その資金があるものは皆無に等しい。
一部のモデル、例えばユリなどは最初から仕事を始め、38歳の時には10万以上の賃貸マンションに住んでいたが、若いクローン達は基本的に「施設」を出たがらないし出る金を持たない。
クローン女性の集団生活の中では、グループとリーダーが生まれる。
彼女らには男との恋愛はないため、レスビアン関係になるものがほとんどであった。
リーダーはその痴話喧嘩、関係の仲裁を取り持てる30歳程度で器量のあるものが多い。
彼女達にとって「SEX」は施設公認の収入源でもあった。
つまり、男の観客を呼び、マジックミラーを通し痴態を演ずる。
見学料は1000円、半分はクローンのものとなり、残り半分を施設が得た。
観客は多くて10人、クローン1人1回の収入は最大2500円程度となる。
第2,4金曜に入場料3倍で処女の「貫通式」ショーがあり、最初こそ人気があったが、今は様々な工夫を凝らしたショーをパートナーと行うものが増え、そちらの方が人気は高い。
飽きてしまうと入場10人に満たないショーも出始め、収入が減るため、クローン達も必死だった。
今では本格的なSMショーなども少なくない。
2週間に1回ほど自分の番が回って来る。
彼女らは出る・出ないは自由であって、金が欲しいものは頻繁に出られる仕組みになっている。
その金は街で遊ぶ金となり、こつこつと貯めるものもいた。
ホステス的な仕事も同様な仕組みとなっていて、月に4,5万が彼女らの収入の全てである。
働かなくても食料等は嗜好品以外、全て金がかからないので、4,5万でも問題はない。
そんな中で、彼女らが街に出た際、観客となった男がクローン女性に近づき、クリーン動産法の「オーナー」になると言う約束が成立する。
これは社会問題となった。
いずれにしても、多くのクローン女性が将来の安定と未知への興味のため、役所への届出をクローン動産法に基づき提出し、その増加に加速度が付いている。
「ねぇ、どうするの。」
「そうねぇ。お金も欲しいけど、あの身体に付けられるピアスや赤外線印は恥ずかしいかなぁ。」最近、良く出るクローン女性通しの中での会話。
「うーん、あの娘、えっーと!サクラ。そう、サクラ!25から5年契約で2000万ですって。」
「聞いた!聞いたけど、あのグレーの器量良しで5年が2000万か・・・見た?彼女の最後のここでのお風呂。」
器量良しは似たもの同士でほぼ全てと言えるが、遺伝以外の要素で目と髪の色が2,3%の割合でクローンには変異が起こる。
遺伝子の抽出場所は決定されているが、研究者の「好奇心」で選択された遺伝子は極めて少数であったが、金髪なども生まれるが、1ヶ月を持たず100%その命を落とした。
従って、目と髪の色は黒が97%、グレーが3%である。
希少価値はこの契約で、時に普通より安く、或いは高く見積られる。
「買う側」は日本的を望んだのか、サクラが「グレー」の最初だったため、「偶然の不幸」なのかは定かではない。
サクラは何故、その価格を承諾したのかも謎だが、男との付き合いがあったことも噂で出た。
拒否権のあるこの契約では「見知った男」の方が良いに決まっている。
いずれにしてもサクラの1年辺り、400万はただ同然と言えるものだった・・・彼女の30以後の巻き返しは当然あるが。
「えっ?あなた見たの。」
「見たどころか、話もしたわ。」
「へぇ~何だって。」
「「辛かった。」それだけよ。そりゃそうよ。乳首とあそこの金のピアス。それに下腹部の印。多くの人のいる前で全部晒して、最初は5千万は堅いと役所の人が言っていたのに、その半分にも満たない金・・・でね、背中をね、ソ~となぞってみたの。」
「・・・。」
「何、その沈黙。」
「・・・ど、どうだったの。」
「だから何、その質問・・・はぁ~、あなたも興味があるわけね?あのピアス。」
「そりゃ、あるわよ。大金は貰えるし、もっと綺麗になれるに違いないもの。」
「綺麗」は彼女らの受ける教育から得る、ただ一つの価値である。
しかし、彼女らは金を得る手段、教え込まれた美を求める方法が実際はわからない。
恋をすれば、男と交われば・・・外見的にほんの少し、内面的には劇的に変化する・・・。
彼女らの想像の範疇であるが、「女」の直感・感性で予想できた事を口にしたに過ぎない。
最も「恋」は、まったく適切な言葉とは言えないが。
「ふふっ、お利巧なお答えだけどだいぶ違うみたいよ。」
「何?何が違うの・・・。」
「例えばお金。大して残らないって、サクラさん言ってたもの。」
「でも、1800万以上は残るんでしょう。良いわよ。お金の話は。教えて、彼女の反応。」
「Hねぇ~せ・な・か・を・ね。そーっとなぞってみた・・・の。」
「ブツわよ。もう、今日はおわずけね。」
二人は日常以外では・・・日常でも恋人通しだった。いつも求めて来るのはサクラと接触のあった「女」。
「はい、わかりました。お教えします。旦那様・・・SM本当にやるの?最近の超過激みたいだけど・・・。」
また、相方の女の話がズレタため、布団をかぶって寝ようとする。
「ごめんなさい、言うわよ、言う。後でちゃんとしてよ。」まだ、サクラの話にならないため、布団は動かない。
「背中をナゾッタの、そしたら・・・。」相方は身をのりだした。
「ビクッという感じで一瞬身体が硬直して、周りに3人位その場に居たんだけど、オシッコ漏らしちゃって、その上に倒れこんじゃった。」
明らかにそれを聞いたクローンは興奮していた。
坐り直して、自分のヴァギナを指で拡げる。
「舐めながら続けて。」
「ハイ。お姉さま。」
いつもの夜の関係になり、上の唇が下の唇と接触し舌が伸びる。
「それでね、大丈夫って聞いたら・・・。」
チュウ、チュウと愛液を吸い出しながら女は話を続ける。
「サクラさんね。一旦、留め金が外れたら、イクまで戻れないって、掻き毟る様なオナニーを始めたの。」
ドロっとした液体を舌に感じた女は更に続けた。
「A01978って赤外線印が少し悲しく見えた・・・サクラさんは翌日からもう帰らないでしょう・・・でも、顔が火照っている感じがして、いつもより綺麗に見えたわ。」
「そう・・・。」
「どうしたの、お姉さま。すごい濡れ方。本当は私の方がお姉さま役に向いているんじゃないの。」
(サクラさんはもうどなたかに・・・。)
ユイは来週、役所にクローン動産手続きを行おうと思っている。
彼女のヴァギナを舐めている相方には内緒だった。
動機は?と聞かれたら・・・現在の22歳から24歳までの価値、ユイの価値を自分自身で知りたい。
まだ幾つも理由はある。この2年を2000万以下で与えるつもりはない。
サクラより高額で短期間。
自信はあった、漠然としているが、なんとなく。
彼女は良く街で声を掛けられる。
法で禁じられた先行きを期待するものではないが、ユイは男に取って好ましい「女」であるらしい。
一緒にお茶、酒を飲むには、多くのクローン女性の中でも彼女はベター・・・ベスト。
2年の契約後、この施設に戻るつもりである。そして、30まで資格を持っている「美しさについて」の教官を行い、再び市場に戻り、今度は億以上の金を得る。
40以後は夢として皆と同じだが、持ち家を得て優雅に暮らす。
彼女の「人生のビジョン」である。
ユイの知能指数はクローンの中で飛び抜けて高い・・・。
もう一つ付け加えなければならない。
確かに彼女には何か男に頼りたい・・・簡単に言うと、男に抱かれたいと言う願望が強い。
集団の中で男が声を掛けてきた時、彼女は決まって顔をピンクに染め、下向き加減になってしまう。
そして、男は彼女を必ずと言って良いほど誘う・・・選ぶ。
男が彼女を自分のものにしたい気持ちが伝わってくる・・・歓喜が身体を駆け巡る。
身体にピアスをしたらどうなのか。
彼女はたぶん、女が得れる最大の快楽に溺れてしまうかもしれない。
しかし、心のどこかでそれを望んでいる。
「ビジョン」の話など自分への言い訳かもしれない・・・。
翌週、役所でクローン動産手続きをした事を、ユイは相方に告げた。
「そう、ユイは行くと思ったわ。」恋人の女は普通に答えた。
「あなたはもう、ここには戻らないのね。」
「戻るわよ。2年契約のものだもん。それに3千万以下だと私はお断りとしたし、お話が成立せずにピアスと印のみ
付けて戻ってくるかも。」ユイは70%以上の普通を言った。
「気づいているでしょう。あなたはきっと奪い合いになるわよ。お金なんて、たぶん、その倍は付くわ。・・・気づいているでしょう。」ユイは顔を傾げる。
「ユイ。あなたの心は男を待っている。しかも、・・・。まぁ、いいわ。可愛がってもらえるわよ。・・・悪い男に当らない事を祈るわ。」ユイは恋人に抱きつく。
「ありがとう。気づいているの。そう、もう戻れない。・・・でも、それでも・・・。」ユイは泣きながら、別れを言った。
恋人は今日が最後になるだろうユイの身体を強く抱いてやるしか術がない。
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