特開2045-34987 物語2 特許

ある特許が出願された。
名称は「女性」である。出願人の場所には「ウイリアム・ジャパン女学院」とある。
1ヶ月後、それは公開された。
「特開2045-34987」
名称 「クローン女性」
請求項1 自ら望むクローン女性が性的快感を得る際、その快感を増幅すると共に、その快感が25歳を頂点とし、40歳まで持続させる乳首・陰核にピアスを取り付けたクローン女性。
請求項2 材料を化学式・・・・・・・・・・で表される、請求項1記載のピアスを取り付けたクローン女性。
この特許出願は専門家の間で話題となった。
特許は物品並びに、その製造方法に与えられるものであったが、果たして審査するスーパーコンピューターは曖昧な地位のクローン女性を「物品」と判断するか。
元々、話題造りに企業(ウイリアム・ジャパン女学院は派遣会社)が出したものではないか?従って、審査請求を行うのか?
もし、審査請求した場合は認められるか?認められないか?
これには日本国民の世論は半々である。
「認められる」の根拠は「自らが望む」の記載があり、クローン女性の法的立場が曖昧だったこと。
「認められない」の根拠は、「公共良俗の規定に反する」だった。
審査を行うコンピューターには、あらゆる法、裁判所の判断、マスメディアの論調、世論の動きなどがインプットされ特許の要件を全て満たしているかで判断される。
3ヶ月後に審査請求され、その1ヶ月後に特許となった。
様々な意見が出たが、この出願はまるで壁掛けTVを扱うかの様に一切の議論なしで特許となり、ある意味、この特許から逆に法律が変わっていく不思議さを現在は持っている。
特許庁のスーパーコンピューターは、世界最新の「理論武装を内蔵」した道具であって、今までその判断を覆すものが
あったことがない。
ちなみに政治の表舞台、国会の2院政の1院も現在は3つのコンピューターの「合議制」によっている。
2047年10月、大きな政治的異変が起こった。
クローンを含めた全て日本住民の平均寿命は、女性で100歳、男性でも90歳になっている。
しかも、それぞれが「精神的」は別にして健康な状況である。
富の固定されたピラミッドの中で、その頂点にあるものは過去の遺産を引き継いだものであり、中間層にも貧困層にも変化は起きず、何も持たず生まれたクローンは、その状況から抜け出せない。
人間の野心は様々なチャンスを掘り起こし、積み上げようと企てるが、精々、隙間産業狙いの小さなビジネスが軌道に乗り、数億ほどの金を得る企業が出来上がり、それらに対応し等量の資本が消えていく。
ビジネスチャンスなど今はほぼ存在しない。
宇宙、深海、地中奥深くも、現状においてシミュレーション技法の画期的発達によりロケット技術は極めて安定性の高い開発が可能となり、ロボット工学の進歩でも、「地球」自体が次第に明らかになり、そして実際に火星程度までの遊覧旅行は1日1便ほどは富裕国では実現されていた。
最も大きな課題は科学的には、「死」の克服が大命題であったが、これはいくつかの発想が生まれ、そして消えていく。
老いた細胞は決して蘇らない事がネックとなり、金を持っている老人層からの資金繰りが不能で、細胞の老化を一定レベルで食い止めることは研究されているが、意識の中核、すなわち脳の学習が積み重ねられる以上、その細胞の老化は「現在」の結論で、それに上乗せなども考えられたが基本的意識の拡散で「個」が失われる事も確認された。
将来的課題は、むしろ次世代に「現状」の科学理論を継承することが最重要課題である。
後はSEXと食についてのテーマくらいしかない。
SEXは擬似的なものなら、どんなものでも手に入る。
ただし、その感覚・記憶は1,2時間ほどで曖昧となる仕組みで中毒性はない。
まず異変の一つにクローン禁止法が成立する。
さすがにこれ以上の「人口増大」は宇宙で生産されるたんぱく質、アミノ酸など、主要な食料に必要な物質の需要と供給のバランスが崩れる。
その法成立前に培養されているクローンを含め、約1億7千万の「人口」を日本は有した。
女性:男性比率は実に50:1に達している。
この法改正で、富の分配は完全に停止されたといえた。
すなわち、クローンは日本人細胞から生まれなくなり、この報酬は無くなった
。
第1次法でその細胞分配は小さな労働力となり、国の再活性を目論見、一時100万ほどの値段が付いたが、国の負担では現状はカバーしきれない状況となり、現状で数千円であったが、まだ現金が必要な人間は最初の気味が悪い印象は全く薄れ、数千円で自分と瓜二つの「人」を作ろうとする。
クローン生産には厳罰が同時に用意されたが、これも裏の商売となることは必然であろう。
また、法改正以前に駆け込んだ者のクローンは、年齢を8歳から12歳で自然界に出され、世の中の動きを4年かけて観察することになっている。(最も仕付けやすいとされる12歳から4年引き伸ばされた事になる。)
まさに人間は全てを満たし、老いのみが地球上の課題として残された。
矢継ぎ早にクローン動産法が生まれ、明らかに先に書いた特許の影響に違いない。
「クローン動産法」はわかりやすい。
先の特許において、その内容を満たすクローン女性の売買・所有を認めた内容である。
ただし、当然の事であるが、クローン女性は元々、特許に記載されたピアスなど身に付けてはいないし、誰の所有物でもない。
先の法による経済・景気沈静化防止案の意味合いが色濃い。
すなわち、クローン女性は自ら値を付け、40歳以後の生活のための金を得る。
それは公により開かれる「市場」のみ可能であり、契約書もクローン、買い手、役所で保管される。
この売買は18歳から39歳までの意志あるクローン女性にだけ可能であって、契約書の内容も役所の認可が必要だった。
性的感度が高められたクローン自身の売買のため、SEXなどは自由であるが、法の名残りで妊娠は許されない。
元々、クローンは基を辿れば、血は1万に満たないと言われており、その血の行方が定かではない事、クローンの2世、3世から起こる病的現象が想定できなかったからである。
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